"A Model of a Predatory State" by Boaz Moselle and Ben Polak (1997)
かなりおもしろくて、他にやることがあったのに夜ふかしして読んでしまった。
税収最大化国家を数理モデル化し、かなり悪いと結論づける論文。
盗賊と農民が両方いる社会。盗賊は農民から盗める。人は利益に応じて盗賊になるか農民になるか決めるので、盗賊と農民の効用がちょうど同じになるところで均衡となる盗賊/農民の比率が定まる。
論文では盗賊が独占化した場合も考えている。マフィアのドンは、マフィア内に加わっている盗賊から組合料を徴収する。
独占だと供給される商品は少なくなるので、窃盗という商品の供給が下がる
供給者が独占すると市場に供給される商品は減るので、暴力の独占が行われると、暴力は減る
ここで税収最大化国家を導入する。王というのを考える。王はマフィアのドンとは違い、農民からだけ税を取れる。王が盗賊に危害を加えることができる場合、農民が盗賊になって税から逃れるということができないので、税率は上がり、王が盗賊を討伐するほど農民の暮し向きは悪くなる。
社会人 (農民) は反社会人 (盗賊) になって社会 (王) から逃げる可能性があるということによって社会から搾取される度合いが抑えられているから、社会が反社会人に厳しくなると社会人にも厳しくなる
もし取締が厳しくなり反社会人の効用が0になったなら、社会人の効用はそれと同じところで均衡するから、社会人も効用が0になるまで社会 (王) から搾取される
このモデルだと、アナーキーや、盗賊が独占化 (マフィア化) している場合のほうが、王がいる場合よりも被治者にとってはいいということが言えるらしい
公共財についても分析している。税収最大化国家は、残念なことに、自分以外の誰にとっても悪くなるような仕方で公共財を提供したり、自分以外の誰にとっても良くなるような公共財を提供しなかったりするらしい。
総生産を増やすような公共財を提供した場合に、盗むものが増えて盗賊になる利益が上がり、盗賊が増える可能性がある (この場合王が取れる量はすり減るので、税収が必ずしも総生産に比例して増えるわけではない)。
祝祭やサーカスのような、農民だけが楽しめる公共財 (盗賊は排除。排除可能ってことは、クラブ財?)は盗賊ではなく農民を選ぶ人の数を増やすことで、税収を増やし、農民の厚生も上がるので、提供される。これは幸運なことだ。
あたかも王が犯罪を取り締まったり良いことをしているように見えても、それによって被治者が搾取される量が増えているかもしれない、見かけに騙されてはならない、と注意を促している。
前の税に応じて将来の期待を形成する動学的モデルも扱ってる
こっちは事前に申告した税率を守れるかどうか というコミットメント問題も考慮してる
税収最大化国家は、Moselle and Polak によると、マンサー・オルソンやヤーヴィンが言うのに反して、かなり悪い (アナーキーよりも悪い)
MOSELLE, BOAZ AND POLAK, BEN. “Anarchy, Organized Crime, and Extortion: A Cynical Theory of the State.” Manuscript, Harvard U., 1995
(Szaboの指摘: )オルソンでは複数の盗賊が同じ被害者を餌食にすると仮定しているけどBoaz Moselle and Ben Polakはそこで異なっているという指摘?
Szaboは、Boaz Moselle and Ben Polakが人口に与えるマルサス的影響を無視しているとも指摘してる
https://www.youtube.com/watch?v=ZgpKxdvYHu0
のモデルと似てる (泥棒 = レントシーカー とすると)